見えないリスクが会社を脅かす——シャドーIT問題の深刻さ

「便利だから」という理由で、従業員が会社に無断で利用しているクラウドサービスやアプリケーション。これがシャドーITです。情報処理推進機構(IPA)の調査によると、企業の約7割がシャドーITの存在を認識しており、そのうち約4割が実際にセキュリティインシデントを経験しています。本記事では、シャドーITを検知する具体的な方法、管理ルールの策定手順、そしてCASB(Cloud Access Security Broker)を活用した効果的な対策までを解説します。情報システム部門の担当者や経営層の方が、明日から実践できる内容をお伝えします。
シャドーITが危険なのは、情報漏洩やマルウェア感染のリスクだけではありません。会社が把握していないツールで業務データが扱われることで、退職者による情報持ち出しや、サービス終了時のデータ消失など、事業継続に関わる問題にも発展しかねないのです。
シャドーITとは何か——なぜ従業員は無許可ツールを使うのか
シャドーITとは、企業のIT部門が把握・承認していないハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービスを従業員が業務で使用することを指します。代表的な例としては、個人契約のクラウドストレージ(Dropbox、Google Driveなど)、無料のファイル転送サービス、個人のスマートフォンでの業務メール確認、無許可のチャットツールなどが挙げられます。
総務省が公表した「令和5年版 情報通信白書」によると、テレワークの普及に伴い、従業員が自己判断でツールを導入するケースが増加しています。従業員がシャドーITに手を出す理由は、主に3つあります。
第一に、会社が提供するツールの使い勝手が悪いことです。承認されたファイル共有システムが遅い、容量制限が厳しいといった不満から、より便利な外部サービスに流れてしまいます。第二に、業務効率を上げたいという純粋な動機です。新しいプロジェクト管理ツールやコミュニケーションツールを試したいという意欲が、結果的にシャドーITを生み出します。第三に、そもそも何がシャドーITに該当するのか、従業員が理解していないケースも少なくありません。
重要なのは、シャドーITを利用する従業員の多くに悪意がないという点です。だからこそ、単純な禁止ではなく、適切な検知と管理の仕組みが必要になります。
シャドーITがもたらす4つのセキュリティリスク
シャドーITを放置した場合、具体的にどのようなリスクが発生するのでしょうか。ここでは主要な4つのリスクについて解説します。
1つ目は情報漏洩リスクです。個人契約のクラウドサービスには、企業向けのセキュリティ機能が実装されていないことが多く、アクセス権限の管理も不十分になりがちです。ガートナー社の調査では、企業で利用されているクラウドサービスの約3分の1がIT部門に把握されていないとされています。把握されていないサービスに機密情報が保存されれば、漏洩リスクは格段に高まります。
2つ目はマルウェア感染リスクです。セキュリティ審査を経ていないアプリケーションには、脆弱性が存在する可能性があります。そのアプリケーションを経由してマルウェアが社内ネットワークに侵入すれば、被害は全社に拡大しかねません。
3つ目はコンプライアンス違反リスクです。個人情報保護法や業界固有の規制に対応するためには、データの所在と取り扱い方法を把握する必要があります。シャドーITによってデータが分散すると、法令遵守の証明が困難になります。
4つ目は事業継続リスクです。無料サービスは予告なく終了することがあります。業務に不可欠なデータが、突然アクセス不能になる事態も想定しなければなりません。また、退職者が個人アカウントで業務データを保持し続けるケースも、シャドーITならではの問題です。
シャドーITを検知する3つの方法

シャドーIT対策の第一歩は、現状を把握することです。自社でどのような未承認ツールが使われているのかを可視化する方法を紹介します。
最も基本的な方法は、ネットワークトラフィックの分析です。社内ネットワークを通過する通信を監視し、どのクラウドサービスにアクセスしているかを把握します。ファイアウォールやプロキシサーバーのログを分析することで、従業員がアクセスしているSaaSやWebサービスの一覧を作成できます。この方法は追加コストが比較的少なく、既存のインフラを活用できるメリットがあります。
次に効果的なのが、エンドポイント監視です。従業員のPCにインストールされているアプリケーションを定期的にスキャンし、許可されていないソフトウェアを検出します。資産管理ツールを導入している企業であれば、その機能を拡張して対応可能です。
そして、より高度な検知を可能にするのがCASB(Cloud Access Security Broker)の導入です。CASBは、従業員とクラウドサービスの間に位置し、すべてのクラウド利用状況を可視化します。どの従業員が、どのサービスに、どのようなデータをアップロードしているかまで把握できるため、リスクの高いシャドーITを優先的に対処できます。
CASBの導入にはコストがかかりますが、クラウド利用が進んでいる企業にとっては、投資対効果の高い選択肢といえます。IPAが公開している「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、クラウドサービス利用時のセキュリティ対策としてCASBの活用が推奨されています。
管理ルールの策定——禁止ではなく「適切な利用」を促す
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シャドーITを検知したら、次は管理ルールの策定です。ここで重要なのは、単純な「禁止」ではなく、従業員のニーズに応える形でルールを設計することです。
まず、検知したシャドーITを分類しましょう。業務に必要で代替手段がないもの、会社承認のツールで代替可能なもの、そして業務に不要で明らかにリスクが高いもの、という3つのカテゴリに分けます。
業務に必要なシャドーITについては、正式に承認するプロセスを設けます。セキュリティ要件を満たしているか評価し、問題がなければ公認ツールとして登録します。この「ホワイトリスト化」の仕組みがあることで、従業員は安心して新しいツールの利用申請ができるようになります。
代替可能なシャドーITについては、会社承認のツールへの移行を促します。この際、なぜ従業員がシャドーITを選んだのかを理解することが大切です。公式ツールの使い勝手に問題があれば、改善を検討しましょう。
明らかにリスクが高いシャドーITについては、利用を禁止します。ただし、禁止する理由を明確に説明し、代替手段を提示することで、従業員の理解を得やすくなります。
ルール策定後は、従業員への周知徹底が欠かせません。シャドーITのリスクを具体的な事例とともに説明し、申請プロセスの存在を知らせましょう。年に1回のセキュリティ研修だけでなく、定期的なリマインドも効果的です。
今すぐ始められる5つのシャドーIT対策

ここまでの内容を踏まえ、御社で今すぐ実践できるアクションを5つ紹介します。
第一に、現状調査の実施です。ファイアウォールやプロキシのログを確認し、従業員がアクセスしているクラウドサービスの一覧を作成してください。想定外のサービスが見つかる可能性が高いはずです。
第二に、従業員アンケートの実施です。「業務で使っているが会社に申請していないツールはありますか」と匿名で問いかけることで、ログ分析だけでは見えないシャドーITが浮かび上がります。
第三に、ツール申請プロセスの整備です。新しいツールを使いたい場合の申請フローを明確にし、申請から承認までの期間を短縮することで、シャドーITの発生を抑制できます。目安として、申請から1週間以内に回答する体制を目指しましょう。
第四に、公認ツールの見直しです。従業員がシャドーITに流れる原因が公式ツールの不便さにあるなら、ツール自体の入れ替えや設定変更を検討します。従業員の声を聞きながら、使いやすい環境を整えることが根本的な解決につながります。
第五に、セキュリティ教育の強化です。シャドーITのリスクを具体的に伝え、「なぜ会社がツール管理にこだわるのか」を理解してもらいましょう。情報漏洩が発生した場合の影響を自分事として捉えてもらうことが、行動変容の鍵になります。
継続的なモニタリング体制の構築
シャドーIT対策は、一度実施して終わりではありません。新しいクラウドサービスは次々と登場し、従業員の働き方も変化し続けます。継続的なモニタリング体制を構築することが、長期的なセキュリティ維持には不可欠です。
定期的なログ分析を習慣化しましょう。月に1回程度、ネットワークログを確認し、新たなシャドーITの兆候がないかをチェックします。CASBを導入している場合は、アラート設定を活用して、リスクの高い行動を即座に検知できる仕組みを整えます。
また、セキュリティポリシーの定期見直しも重要です。半年に1回程度、ホワイトリストを更新し、不要になったツールの削除や、新たに承認されたツールの追加を行います。業界動向や法規制の変化にも対応できるよう、柔軟な運用を心がけてください。
インシデント発生時の対応手順も事前に定めておきましょう。シャドーIT経由で情報漏洩が発生した場合、誰が何を判断し、どのように対応するのか。手順書を作成し、関係者で共有しておくことで、有事の際の混乱を最小限に抑えられます。
まとめ——シャドーIT対策は「管理」と「利便性」のバランスがカギ
シャドーITは、従業員の利便性追求とセキュリティ管理のギャップから生まれる問題です。単純な禁止ではなく、検知・評価・承認・教育のサイクルを回すことで、リスクを抑えながら業務効率も維持できます。
本記事で紹介した内容をまとめると、まずネットワークログやエンドポイント監視でシャドーITを可視化すること。次に、検知したツールを分類し、承認・代替・禁止の判断を行うこと。そして、従業員への教育とツール申請プロセスの整備で、新たなシャドーITの発生を抑制すること。この3つのステップを継続的に実践することが、効果的なシャドーIT対策につながります。
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